CordwainersCatの日記

Twitterに書き切れないような長い話はこちらに書こうと思います

連続複利からのネイピア数 e の定義

[前の記事からの続き]
これ結局、いわゆる「瞬間複利」あるいは「連続複利」の問題なんですよね。で、もともとの利息の基本式  ΔG=αGΔtΔt0 に持っていく事を考えます。 両辺をΔtで割り算してΔG/Δt=αG\displaystyle \lim_{Δt \to 0} の極限はdG/dt=αG と言う微分方程式になります。これを解くとG=ke^{αt} となります。kは任意の定数係数です。微分方程式と呼ぶのもオーバーな気もしますが、一番簡単な部類の微分方程式ですね。Gの初期値は即ち元金ですので、初期条件 t=0の時のG=kは元金の10,000(円)と置けば良いことが分かります。上式のt1(年)を代入するとke^{α}となり、これ 10,000 \times e^{0.0365}が一年後の瞬間複利計算の元利合計と言うわけです。
これだけではあまり面白くないので、前回記事の差分の式からeを底にした指数関数が出てくる理由を考えます。前回記事の 「G(n)=G_0(1+αΔt)^{n}=G_0(1+α\frac{T}{n})^{n} と書けます。Δt=\frac{T}{n}T=1(年間)」のTはそもそも1(年間)なので整理すれば G(n)=G_0(1+\frac{α}{n})^{n} と書けます。
ここで元金G_0は実はただの定数係数ですので増加率(これをYとおく)だけの式を考えるとY=(1+\frac{α}{n})^{n}です。単利の利率αを改めてxと置き直し、このn\inftyに持っていく極限を考えます。Y(x)=\displaystyle \lim_{n \to \infty}(1+\frac{x}{n})^{n}となります。あれあれ、なんだか見覚えのある式になってませんか?実はこれ指数関数の定義、 e^{x}=\displaystyle \lim_{n \to \infty} (1+\frac{x}{n})^{n} そのものなんですよね。以下の文書にその解説があります。ただし、なぜこの数列の極限がネイピア数の実数乗そのものなのかと言う説明はありません。収束する、そして極限がある事は議論してますが。「これが定義だから」で済ませてるようです。
なので、ここからはネイピア数自身の定義を考えていきましょう。収束数列によるネイピア数 eの定義は  e=\displaystyle\lim_{n \to \infty}(1+\frac{1}{n})^{n} と言うものです。他にもいくつかの定義があるようですが、これが一番複利計算の式と関連しています。連続複利の計算から考えられた式だと言う事です。
上式は以前の複利の利率を考えた式 Y=(1+\frac{α}{n})^{n}α1と置いた式になっています。つまり単利の利息を定義する一定期間Tにおける増加率を100\%、すなわちある期間Tで二倍に増えるものとしています。さらにそのTを時間の単位にして、1として置いてるわけです。
そんな良い利率は近頃あるはず無いって?単利の利息を定義する期間Tの方を伸ばせば良いんですよ、30年弱ほどまでw そうすれば年率にして3.65\%くらいになります。
数列 (1+1/n)^nn\inftyに近づけるとどこに収束するか?実際に計算してみましょう。
(1+1/1)^1 = 2.0
(1+1/2)^2 = 2.25
(1+1/3)^3 = 2.370370…
(1+1/4)^4 = 2.441406…
(1+1/5)^5 = 2.48832
(1+1/6)^6 = 2.521626…
(1+1/7)^7 = 2.546499…
(1+1/8)^8 = 2.565784…
(1+1/9)^9 = 2.5811747…
(1+1/10)^10 = 2.593742…
 
(1+1/100)^100 = 2.704813…
 
(1+1/1000)^1000 = 2.716923…
 
(1+1/10,000)^10,000 = 2.718145…
 
(1+1/100,000)^100,000 = 2.718268…
 
(1+1/1,000,000)^1,000,000 = 2.7182804…
 
(1+1/10,000,000)^10,000,000 = 2.7182816…
 
ようやくe=2.718281828… に収束して来ました
この数列が本当にネイピア数 e=2.718281828459045…に収束するのかどうかの検討はやめておきます。切りがありませんのでw そもそも  e=\displaystyle \lim_{n \to \infty} (1+\frac{1}{n})^{n} はeの定義の一つですし。本当はこの数列が単調増加で上に有界だから収束するとかを議論しないといけないのですが、面倒くさいのでやめますw
ちなみにTwitterで書いてた時に教えてもらったネイピア数eの収束に関する議論の記事はこちらです。
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ネイピア数eの定義e=lim(n→∞)(1+1/n)^n の収束具合

 

これでようやく直近の本題に入れます。ネイピア数eの定義は e=\displaystyle \lim_{n \to \infty} (1+\frac{1}{n})^{n} だと言う事をひとまず受け入れましょう。これが無理数(超越数) eの定義だと。だとしても、ここから上に書いた指数関数の定義、 e^{x}=\displaystyle \lim_{n \to \infty} (1+\frac{x}{n})^{n} を導けるでしょうか?私にとっては今これが問題です。
逆はもちろん簡単ですね、x1を代入するだけですから。しかし、今はネイピア数eの定義の方から、eを底とする指数関数は e^{x}=\displaystyle \lim_{n \to \infty} (1+\frac{x}{n})^{n} で定義できる事を何とか導きたいわけです。パッと見、明らかだろって?いや、それは違いますよね。何らかの工夫が必要です。